SPECIAL

機雷とは…海中や海底に秘かに設置され、気付かずに航行する船舶を感知して爆発、撃沈させる兵器。海を守り、海を往く――海上航路の安全に責任を持つブルーマーメイドにとって最も許せない存在!そんな機雷が晴風の前に立ちふさがった第6話。クルーたちによる“機雷掃海”を描くため、『はいふり』スタッフは海上自衛隊の機雷掃海訓練へと同行した!


  • ■MINEX(機雷戦訓練)にやってきた
     まだ寒さ厳しい2月の三重県松阪市。早朝7時に港へとやってきたスタッフを迎えてくれたのは海上自衛隊の掃海艇「いずしま」。わずか排水量500トン程度の小柄な船体ながら、後部には各種の掃海用装備が満載されていて、ギュッと詰まったシルエットの艇だ。

  • 朝焼けの松阪港に停泊する掃海艇「いずしま」。「すがしま」型掃海艇の7番艇で、同型は1991年の掃海部隊ペルシャ湾派遣での教訓を元に設計・建造されている。

  • スタッフたちは、この艇で出港、・・・
    伊勢湾内で行われている「MINEX(機雷戦訓練)」の訓練海域に向かうこととなった(MINEXは、Minesweeping Execiseつまり機雷掃海訓練の略。「マイネックス」と読む)。訓練海域に向かう途中、「いずしま」を含む3隻の掃海艇で編成された第1掃海隊を指揮する宇都宮2等海佐より現代の機雷戦についての説明が行われ、取材を前にスタッフたちも一から掃海について学ぶことに。

  • パワーポイントで機雷戦について説明をしてくださる宇都宮2佐。とても話し上手な方で、スタッフたちにもわかりやすい解説だった!

    宇都宮2佐の説明を簡単にまとめてみたい。まず、機雷の種類について――機雷と言うと、海に浮かんで接触すると爆発するイメージが強いが、設置方法・起爆方法ともいろいろなものがあるそうだ。おおまかに言うと以下のようなもの。

    <設置方法>
    浮遊機雷:プカプカと海上や海中に浮いている機雷
    係維機雷:海底のおもりから伸びたケーブルと繋がり海中に浮いている機雷
    沈底機雷:海底に沈んでいる機雷

    <起爆方法>
    触発機雷:接触すると爆発する
    感応機雷:スクリューの音、船体の磁気(※)などを探知して爆発する
    管制機雷:人為的に操作して爆発させる

     これに対して、掃海の方法もさまざま。偽のスクリュー音や磁気を発生させて機雷を誤爆させる方法、海中に遠隔操作の潜水ロボットや潜水隊員を下ろして爆破させる方法などなど。第6話で描かれたのは、ワイヤー(掃海索)で機雷のケーブルを引っ掛けて切断する方法。この方法は、ケーブルで繋がれた係維機雷に対して有効で、「係維掃海」と呼ばれている。今回の訓練でもスタッフたちを前に、実際の掃海具を用いて係維掃海を実演してくれた。その様子をご紹介しよう!
    ※巨大な金属の塊である船舶は、その船体に磁気を帯びる。なお掃海艇は磁気対策として木造もしくは強化プラスチック製となっている。

  • ■実演、係維掃海!
     係維掃海は、牽引したワイヤー(掃海索)が左右に広がることで、浮いている係維機雷のケーブルを引っ掛け、ワイヤーの先端についたカッターで切断、海面に浮き出た機雷を銃撃で爆破処理するというもの。ココちゃんの説明にもあったとおり、ワイヤーには「展開器」と呼ばれる器具が繋がれていて、艇が前進すると水流を受けて左右に広がっていく。この方式の掃海具は「オペロサ型掃海具」と呼ばれるもので、第1次世界大戦中に開発され、現代まで使用され続けている。航洋艦「晴風」のモデルとなった日本海軍の「陽炎」型駆逐艦にも搭載されており、当時は「防雷具」と呼ばれていた。

    クレーンで持ち上げられたフロート(浮標)。フロートが展開器を浮かせている。左右それぞれ、緑と赤の旗を立てる。

    掃海艇の斜め後方にフロートが浮かんでいる。つまり、あの範囲までワイヤーが延びて掃海できているということ。今回は実演のため、近い距離にフロートを浮かしているが、実際はより遠距離までワイヤーを展開するそうだ。

    隊員さんがカッターを持ち上げて見せてくれた。このカッターで係維機雷のケーブルを切断する。

  • ■掃海母艦「ぶんご」へ!
     スタッフは続いて伊勢湾洋上で掃海母艦「ぶんご」に移乗した。「ぶんご」は基準排水量5700tの大型艦で、掃海部隊の指揮機能を持ち、指揮下の掃海艇への補給支援を行う。その名の通り、掃海部隊の“お母さん”的な役割を持っている。

    「すがしま」を「ぶんご」に横付けして移乗する。大きな船体の「ぶんご」に寄り添う「すがしま」は“親子”のようにも見える。

    「ぶんご」では水中処分員による機雷掃討の様子が実演された。水中処分員とは潜水資格を持った“水中の爆発物処理班”であり、小型ボートやヘリによって機雷に接近し、爆破処分を行う。第6話のなかで、ましろが「人力の水中処分は危険だ」と指摘しているが、専門の訓練を受けたスペシャリストである彼らのような隊員がいて、初めて可能な機雷処分方法だ。今回はヘリにより目標に接近する方法が実演された。

  • 「ぶんご」から飛び立ったMH-53Eヘリは、機雷近くの海面でホバリングし、隊員たちがファストロープで海面に降下する。ヘリから海面に降下することを「ヘローキャスティング」と呼ぶ。「Helo(ヘリ)」から「Cast(投下)」するという意味だ。

    「ぶんご」の後部ヘリ甲板に戻ったMH-53Eヘリから、水中処分員たちが降りてきた。水中処分員は4名1班で、うち1名は幹部で構成される。彼らの潜水装備は磁気や音が発生しないように特別なものが選ばれている。各掃海艇に水中処分班が置かれていて、今回の訓練では「ぶんご」の水中処分員が、他の水中処分員の指導にあたったそうだ。

    「ぶんご」では隊員食堂で昼食をごちそうに! 海上自衛隊と言えばカレー……では、ありませんでしたが、チキン南蛮(?)を主菜に、野菜炒めやクリームシチュー、かき玉汁までついた充実のメニュー。テーブルが11卓と、やや狭く感じたが、隊員さんたちは3交代制で食事するので問題はないそうだ。ごちそうさまでした!

    ■海上自衛隊は“ブルーマーメイド”だった!?
     さてさて、海上自衛隊と言うと大型のヘリ搭載護衛艦やイージス艦に注目が集まり、掃海艇のことは忘れがち。しかし、海上自衛隊の歴史を振り返えると、掃海部隊こそ海上自衛隊の“原点”だと気付くはず。
     それは第2次世界大戦後のこと。日本近海には大戦中に日米海軍が敷設した機雷、およそ7万個が残り、航路の安全を脅かしていた。そこで掃海技術を持った旧海軍軍人が集められ掃海部隊が組織された――この掃海部隊こそが、のちの海上自衛隊に繋がる第一歩となった。
     現在、海上自衛隊の掃海部隊は世界有数の規模を誇り、能力の面でも高い評価を得ている。 海の安全を守るために組織された掃海部隊と、そこから生まれた海上自衛隊――彼らはまさに、現代の“ブルーマーメイド”と言えるのかも………。

機雷とは…海中や海底に秘かに設置され、気付かずに航行する船舶を感知して爆発、撃沈させる兵器。海を守り、海を往く――海上航路の安全に責任を持つブルーマーメイドにとって最も許せない存在!そんな機雷が晴風の前に立ちふさがった第6話。クルーたちによる“機雷掃海”を描くため、『はいふり』スタッフは海上自衛隊の機雷掃海訓練へと同行した!


  • ■MINEX(機雷戦訓練)にやってきた
     まだ寒さ厳しい2月の三重県松阪市。早朝7時に港へとやってきたスタッフを迎えてくれたのは海上自衛隊の掃海艇「いずしま」。わずか排水量500トン程度の小柄な船体ながら、後部には各種の掃海用装備が満載されていて、ギュッと詰まったシルエットの艇だ。

  • 朝焼けの松阪港に停泊する掃海艇「いずしま」。「すがしま」型掃海艇の7番艇で、同型は1991年の掃海部隊ペルシャ湾派遣での教訓を元に設計・建造されている。

  • スタッフたちは、この艇で出港、・・・
    伊勢湾内で行われている「MINEX(機雷戦訓練)」の訓練海域に向かうこととなった(MINEXは、Minesweeping Execiseつまり機雷掃海訓練の略。「マイネックス」と読む)。訓練海域に向かう途中、「いずしま」を含む3隻の掃海艇で編成された第1掃海隊を指揮する宇都宮2等海佐より現代の機雷戦についての説明が行われ、取材を前にスタッフたちも一から掃海について学ぶことに。

  • パワーポイントで機雷戦について説明をしてくださる宇都宮2佐。とても話し上手な方で、スタッフたちにもわかりやすい解説だった!

    宇都宮2佐の説明を簡単にまとめてみたい。まず、機雷の種類について――機雷と言うと、海に浮かんで接触すると爆発するイメージが強いが、設置方法・起爆方法ともいろいろなものがあるそうだ。おおまかに言うと以下のようなもの。

    <設置方法>
    浮遊機雷:プカプカと海上や海中に浮いている機雷
    係維機雷:海底のおもりから伸びたケーブルと繋がり海中に浮いている機雷
    沈底機雷:海底に沈んでいる機雷

    <起爆方法>
    触発機雷:接触すると爆発する
    感応機雷:スクリューの音、船体の磁気(※)などを探知して爆発する
    管制機雷:人為的に操作して爆発させる

     これに対して、掃海の方法もさまざま。偽のスクリュー音や磁気を発生させて機雷を誤爆させる方法、海中に遠隔操作の潜水ロボットや潜水隊員を下ろして爆破させる方法などなど。第6話で描かれたのは、ワイヤー(掃海索)で機雷のケーブルを引っ掛けて切断する方法。この方法は、ケーブルで繋がれた係維機雷に対して有効で、「係維掃海」と呼ばれている。今回の訓練でもスタッフたちを前に、実際の掃海具を用いて係維掃海を実演してくれた。その様子をご紹介しよう!
    ※巨大な金属の塊である船舶は、その船体に磁気を帯びる。なお掃海艇は磁気対策として木造もしくは強化プラスチック製となっている。

  • ■実演、係維掃海!
     係維掃海は、牽引したワイヤー(掃海索)が左右に広がることで、浮いている係維機雷のケーブルを引っ掛け、ワイヤーの先端についたカッターで切断、海面に浮き出た機雷を銃撃で爆破処理するというもの。ココちゃんの説明にもあったとおり、ワイヤーには「展開器」と呼ばれる器具が繋がれていて、艇が前進すると水流を受けて左右に広がっていく。この方式の掃海具は「オペロサ型掃海具」と呼ばれるもので、第1次世界大戦中に開発され、現代まで使用され続けている。航洋艦「晴風」のモデルとなった日本海軍の「陽炎」型駆逐艦にも搭載されており、当時は「防雷具」と呼ばれていた。

    クレーンで持ち上げられたフロート(浮標)。フロートが展開器を浮かせている。左右それぞれ、緑と赤の旗を立てる。

    掃海艇の斜め後方にフロートが浮かんでいる。つまり、あの範囲までワイヤーが延びて掃海できているということ。今回は実演のため、近い距離にフロートを浮かしているが、実際はより遠距離までワイヤーを展開するそうだ。

    隊員さんがカッターを持ち上げて見せてくれた。このカッターで係維機雷のケーブルを切断する。

  • ■掃海母艦「ぶんご」へ!
     スタッフは続いて伊勢湾洋上で掃海母艦「ぶんご」に移乗した。「ぶんご」は基準排水量5700tの大型艦で、掃海部隊の指揮機能を持ち、指揮下の掃海艇への補給支援を行う。その名の通り、掃海部隊の“お母さん”的な役割を持っている。

    「すがしま」を「ぶんご」に横付けして移乗する。大きな船体の「ぶんご」に寄り添う「すがしま」は“親子”のようにも見える。

    「ぶんご」では水中処分員による機雷掃討の様子が実演された。水中処分員とは潜水資格を持った“水中の爆発物処理班”であり、小型ボートやヘリによって機雷に接近し、爆破処分を行う。第6話のなかで、ましろが「人力の水中処分は危険だ」と指摘しているが、専門の訓練を受けたスペシャリストである彼らのような隊員がいて、初めて可能な機雷処分方法だ。今回はヘリにより目標に接近する方法が実演された。

  • 「ぶんご」から飛び立ったMH-53Eヘリは、機雷近くの海面でホバリングし、隊員たちがファストロープで海面に降下する。ヘリから海面に降下することを「ヘローキャスティング」と呼ぶ。「Helo(ヘリ)」から「Cast(投下)」するという意味だ。

    「ぶんご」の後部ヘリ甲板に戻ったMH-53Eヘリから、水中処分員たちが降りてきた。水中処分員は4名1班で、うち1名は幹部で構成される。彼らの潜水装備は磁気や音が発生しないように特別なものが選ばれている。各掃海艇に水中処分班が置かれていて、今回の訓練では「ぶんご」の水中処分員が、他の水中処分員の指導にあたったそうだ。

    「ぶんご」では隊員食堂で昼食をごちそうに! 海上自衛隊と言えばカレー……では、ありませんでしたが、チキン南蛮(?)を主菜に、野菜炒めやクリームシチュー、かき玉汁までついた充実のメニュー。テーブルが11卓と、やや狭く感じたが、隊員さんたちは3交代制で食事するので問題はないそうだ。ごちそうさまでした!

    ■海上自衛隊は“ブルーマーメイド”だった!?
     さてさて、海上自衛隊と言うと大型のヘリ搭載護衛艦やイージス艦に注目が集まり、掃海艇のことは忘れがち。しかし、海上自衛隊の歴史を振り返えると、掃海部隊こそ海上自衛隊の“原点”だと気付くはず。
     それは第2次世界大戦後のこと。日本近海には大戦中に日米海軍が敷設した機雷、およそ7万個が残り、航路の安全を脅かしていた。そこで掃海技術を持った旧海軍軍人が集められ掃海部隊が組織された――この掃海部隊こそが、のちの海上自衛隊に繋がる第一歩となった。
     現在、海上自衛隊の掃海部隊は世界有数の規模を誇り、能力の面でも高い評価を得ている。  海の安全を守るために組織された掃海部隊と、そこから生まれた海上自衛隊――彼らはまさに、現代の“ブルーマーメイド”と言えるのかも………。